50 チャンス | モクジ | 01 幸せ


あとがきのようなまえがきのようなもの

 今回挑戦したのは「表情」をテーマにした50のお題なのですが……さすがにこれだけ数があるとどこから読んだらいいのか見当がつかないという方もおられるんじゃないかと思います。むしろどこから手をつけようかと何度も立ち尽くしたのはこの私ですとも……何でこんなに多いお題に手を出しちゃったんだろ。
 という訳で、何の参考にもなりそうにないものの、それぞれの話に一言ずつコメントをつけてみました。もしよろしければ、何かの参考にして下さい。何の参考にもならない可能性の方が遙かに高いのですが。


01 幸せ
……一応念の為に言い置くと、彼女はこれでも晩年です。依然衰えない「彼」への執念が恐ろしいですが、本人は旦那と惚気ているつもり。

02 怒り
書いた当初はやっちゃったと思ったのですが、再読するとそれほどでもないですねこれ。抜かれても顔に浴びても平気な美少年かぁ……。

03 切ない(SS)
かなり前に書いたものです。旅行から帰ってきた後、あまりに大量のピンボケ写真を前に呆然としながら思いついたネタだったりします。

04 元気
これも旅行中に思いついたネタ。子供らしい子供を書くことが滅多にないので、何となく書いていても楽しかったです。

05 冷酷
アンコールワットの写真を見たときの随想でした。よく似たことを梨木香歩さんが『村田エフェンディ滞土録』で書かれててちょっと嬉しかったです。

06 痛み
お題をそのまま書くだけじゃなくて、時々無性に捻りたくて……文章自体は稚拙ですが、オチの捻り方は割合気に入っていたりします。

07 恐怖
デイビーもやっぱりDreaming世界の住人だと再確認した文章でした。幾ら陽気を装っても駄目ね……鬱の気質は隠し切れまい。

08 意地
ここまで直球勝負なのも逆に珍しいかもしれないです。「メコノプシスと月の神」のテーマを、もうとことん端的に纏めたらこんな感じ。

09 号泣(SS)
割と長い間書き掛けで放っておいたものでしたが、改めてよく見るとロニーが意外と幼くてびっくりしました。紅凰と背丈変わらないのね。

10 強がり
これを書いているとき、ダワが本当に欲しがっているものは、ニジガロ以外には電動ミキサーだけのような気がしてきて、無性に笑えてしまいました……。

11 苦い
院試の受験勉強中に走り書きしたものです。歴史研究の政治的意味についての論文を読みながら、思わず投げそうになったのはこの私。

12 絶望
オリジナルの神話や民族的風習のメタファーが、個人的には気に入っていたりします。こうした世界観は個人的に凄く好きなのでした。

13 悩む(SS)
これも長い間放置していた文章です。とある病理医の言葉を聞いて、あれこれ考えたことを書き連ねただけなのですが……塔先生の独白にそのままこっそり借用させて頂きました。

14 悦(SS)
全編通して一番普通の家庭っぽくて、実は一番複雑な家庭かもしれません。このお兄様の半生記を辿るのは、個人的にやりがいを感じている作業です。

15 驚き
はじめ「不安」のネタとして書いたのですが、結局その題目はお父さんに譲りました。劇団四季の「ライオンキング」を観た直後の殴り書きだったりします。

16 複雑
実は書きながら登場人物からもらい泣きした数少ない例だったりします。幾つになっても青臭い甫民先生、微妙に私は憎めないのです。

17 期待
この連作で一番古い時期の話になります。18世紀にフランスでドルイドブームが起こっているのですが、グレンドーリー氏はそれとはほとんど無関係の、土着ケルト人集落の司祭だったみたいです。

18 がっかり
過去最短の文章です。元々は主要メンバーの体育祭番外編を書いたときのワンシーンだったのですが、この感覚に覚えがある人は意外と多い気がするのです。

19 企み(SS)
かなり前に書いた短編でした。凄まじい馬鹿ップルですが、こんな激甘な話も、私はまんざら嫌いではないようで……青いなあ。

20 軽蔑
昔「神様を拝んでも何の御利益もないから信心を捨てた」というお爺さんと会って、ずっと反論の仕方を探していたのでした。生き物って案外、殺すまいと意識していないとすぐ死んでしまうものですよね。

21 嘲笑(SS)
話の展開は割と個人的に好きだったりします。苛められてるのは竜血樹のはずなのに、なぜか弓氏の方が可哀想だと周囲では評判でした。

22 感動
大昔に書いた走り書きの清書です。ちなみに海東青は白鳥を狩るのに使われた大型の隼なのですが、実は神話によると白鳥はブリヤート人の血を引く紅凰のご先祖様なのだそうです……そこまで含むつもりはなかったのですが。

23 どうして
アーサー卿の舅になった気のいいこのご友人、名前をイグルガリュック氏といいます。問答無用で、Dreaming一名前を呼びにくい人です。

24 意地悪(SS)
この連作で一番最後に書いたのがこれでした。佐野は個人的に気に入っているのですが、私もまだ掴み切れていない人物です。

25 我慢(SS)
卒論の気分転換に図書館で見たチベットの写真集が凄く綺麗で、文章デッサンをしたくて書いたものでした。西南少数民族のプロポーズって、凄く芸術的だなぁと思うのです。

26 照れ
背筋が痒くなると言うか、むしろ読む方が照れるんじゃないかと思う代物です。実は他にも「耳が」だの「足が」だの言い出して、慌てて削ったなんて内緒。

27 憎しみ
人間の感情で一番不毛だなぁ、とも思う反面、人を何よりも強く突き動かすのもこの感情なんだよなぁ、と思ってしまうのです。私だけかな。

28 微笑み
半透明のくせに息子の前にやたら頻出するお父さんですが、健在だとしてもお母さん以上の過保護になっているのは間違いないかと。

29 まいったな
近代史ってどこの国もかなり血腥いのですが、残忍さでは日本もかなりのレベルだと思うのです。今の凶悪犯罪なんか目じゃないくらい。

30 嫌悪
回りくどい言い回しで凄くわかりにくいかもしれませんが、端的に言えば甫民先生はベルが大嫌いという一言に尽きます。

31 緊迫
私、神様は信じますが幽霊は信じていないので、霊能者とかには何となく眉に唾をつけてしまいます。死んだ人は、生きている人の中に生きていれば十分幸せだと思うのです。

32 知らなかった(SS)
韓国では初雪は物凄い大ニュースになるらしいですね……一躍冬ソナで有名になってしまったジンクスなのですが、元々は「初雪=純潔」から来た連想なのだとか。

33 眠い
今回もっとも卑怯な消化の仕方をしたお題……これは「47.照れ隠し」とセットで読んでくれたら意味がわかるかと思います。

34 疲労(SS)
まさかの展開ですが、作者も本編完結まで予想してませんでした。第三部の後日談という位置付けの予定だったりします、実は。

35 焦燥
前の話が↑なだけに、ギャップが激しくて逆に笑えます。育児相談でこんなこと言われたら相談員さんの方が泣きたくなりそうです。

36 爆笑(SS)
この二文字を見るたび、「一人で笑っても爆笑にはならない」と教えてくれたテレンス・リー似の国語の先生が脳裏を駆け抜けてゆくのです。誰か助けて……。

37 違う
「違う」という表情がってどんなものなのか見当がつかないのですが、積極的に物事を否定するのって、結構強い意志が必要だなとは思います。

38 ショック(SS)
一度生えた髪の色が自然に抜けることは滅多にないので、一晩で白髪になるというのはあり得ないらしいですね。次から生える髪が白くなるというだけで。

39 苦しい
「辛い恋愛をしている」という愚痴は割と聞くのですが、要するにその辛さも構わないくらい好きなんだ、と惚気られているような気がするのです……。

40 拗ねる
気をつけないとこのお嬢ちゃん、いざお嫁に行くときにパパが絶対許してくれない気がします。パパだけじゃなくてお兄さんとお姉さんも。

41 不安
息子から題目を奪い取ったお父さんの呟きでした。手を変え品を変え、竜血樹の「紅凰熱愛!」無限ループを表現するの、結構楽しいんですよね……。

42 自慢げ
なぜか創作メモに書いてあった文章なので清書したのですが、丁度これを書いた時期って卒論が一番せっぱ詰まっていた時期だよなぁとほろ苦く思い返します……。

43 睨む(SS)
いかに美味しそうな食事場面を書くか、がコンセプトでした。でも、ご飯食べてるときってよく考えたらうちの奴らは大抵無言なのでした。

44 不満
一見当たり障りがなさそうに見えて、気になるタイプの人には物凄いネタバレかもしれないですこの文章……ちなみに彼女は兄姉とは違い、別に両親のどちらかに激しく偏って似ている訳ではありません。

45 きょとん
女王様が大統領の押しかけ女房になったのは一応大統領就任後なのですが、別に彼女はお金や権力が欲しかったのではなく、本気で惚れちゃっただけだったみたいです。

46 告白
語り手は、本文中に名前だけが繰り返し登場したトマニです。彼女はアメリカ原住民のシャーマンのはずなのに、なぜか台詞はロマみたいになってしまいました。

47 照れ隠し(SS)
「33.眠い」の後日談になります。本当に手も足も出なくてどうしようもないとき、「待ち続ける」ことだけが自分の意志で能動的にできる唯一の行為だと思うのです。

48 呆れ(SS)
本当にこいつら、呆れるほど地味な人々だと思います。世の中を支えているのがこんな裏方の人々だとはわかっていても、言葉で言い表せないほど地味だともう書きにくくて仕方ありません。

49 見つかった!
マダム・イーグルと紺碧の青空は私の中でセットなのですが、私が見た北京の空は雲とスモッグで薄曇りでした……なので実は空のイメージは、トルコの青空に差し代わっているのです。

50 チャンス
私が恋愛を小説のテーマとして書くことが多いのは、その感情ほど行動や言葉に滲みやすいものが他にないからだと思います。平たく言えば、笑えるほど書きやすいんですこれ。



 何だかんだ言って、愛着のある人々の群像を書くのは凄く楽しかったです。またこういう機会があったら挑戦してみたいです。

 あ、それからもしよろしかったら一言程度で構いませんのでコメントを頂けたら、凄く励みになります。どの話が一番気に入った、とか番号だけをぽちっと書くだけでも結構ですので。




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