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月天心
あいつが好きなの
今も忘れられないの
絶対に忘れたくないの
凄く大好きだったの
一緒にいられなくてもよかったの
笑っててくれるだけでよかったの
それだけであたし充分だったの
ほとんど話とかしたことなかったけど
見てるだけでもよかったの
ぼんやり窓の外を見てるところが好きだったの
先生に当てられて朗読するときの低い声が好きだったの
いつもの無表情が好きだったの
たまに笑ったときの細めた目が好きだったの
別に好かれたいとか思った訳じゃないの
ただ見てるだけで満足だったの
嬉しそうだったり幸せそうだったりしてくれたら
あたしは別に何も欲しくなんかなかったの
――だけど助けてくれたの
ほとんど何の接点もなかったのに
あたしのこと命懸けで助けてくれたの
だからあたしも助けたかったの
幸せになって欲しかったの
笑ってるところをもう一度見たかったの
でも死んじゃった
あたしのせいで死んじゃった
もういないの
どこにもいないの
好きだった人のところにさえいないの
あたしが死なせちゃったのよ
忘れられないの
忘れたくないの
覚えてる限りのあいつが好きなの
もうどこにもいないなら
あたしはあたしの記憶の中でしかあいつに逢えないの
あたしの幻想かもしれないのはわかってる
でもあたしが見て知ったあいつの全部が好きなの
あたしの望む形に歪んでるって言われたらそれまでだけど
あたしはあたしが見て知ったあいつしか知らないから
記憶の中のあいつが全部なの
その全部のあいつが好きなの
ごめんなさい
あたし一生忘れられない
死んでもあいつのこと忘れたくない
あんたのこと一番にはできない
あんたよりもあいつが好きなの
今までも今もこれからもきっとあいつが一番なの
――ごめんなさい
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