43 睨む | モクジ | 45 きょとん


 パパ、
 何であたしだけ目が黒いの?
 何だか仲間外れでつまんない。


 あのね、テン兄さんの目は
 柘榴みたいに綺麗な赤紫でしょ。
 あれって兄さんのお父さんが紫で
 お母さんが青茶の目だったせいなんだって。

 んで、エバ姉さんの目は
 凍った湖みたいに真っ青でしょ。
 あれは姉さんのお父さんによく似たんだって
 この前、姉さんが言ってたの。

 二人ともあんなに綺麗な色なのに、
 あたしだけこんな真っ黒なの。
 何だかすんごく不公平だわ。
 パパだって麦畑みたいなブラウンアイなのに
 何であたしだけこんな濃い色なの?


 ――覚えてないわ、ママのことなんて。
 顔だってリビングの写真でしか知らないし、
 兄さんや姉さんの話でどんな人か聞いただけよ。
 第一、覚えてるはずないじゃない、
 ママ死んだときあたしが幾つだったと思ってるの。


 夜の色?
 何それ、黒のこと?

 ……あたし、いっつも朝寝坊だから朝焼けはよくわかんないけど、
 ああ、でも物凄く綺麗な夕焼けは確かに、兄さんの目の色ね。

 うん、姉さんの目はとびっきりの空色よ。
 特にどれかって言えば、秋の一番よく晴れた空に近い色よね。

 本当にママ、そんなこと言ってたの?
 ――妖精が遊びに来るみたいな、
 真夏の夜の空気の色って?
 兄さん姉さんみたいな空の色だって?


 ……やだ、何かそんな言い方だと、
 兄さんと姉さんにいい色先に取られちゃったみたいじゃない。
 妹のあたしはすんごい不利な気がする。


 ふうん、でも、夜空の色かあ。



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