風化した神
草生す無人の荒野の只中で
時に半ば埋もれるように
『神』は一人、佇む
彼を讃える歌も舞も
失われてなおそこに残る
彼を祀る祭礼の全てが
忘れられてなおそこに留まる
その祭壇は、既に壊れ
その祭祀は、忘れ去られ
その信徒は、死に果てた
不死を謳われた神だけが
不滅を謳われた神だけが
荒野に一人、取り残される
祀る人もなく、そこに佇む
全ての願いの歌声も
彼を讃える神話の語りも
遠く風の中に消え
その存在も忘れられ
ただ『神』がいた痕跡だけが
僅かに土の上に零れる
名前をなくした神が佇む
信じる者の滅び果てた
風化した異教の神
願いも祈りも全て失い
ただ彼だけが、一人残る
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