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王と女神と死神と

 彼女が死にたがっているのは知っている。
 彼女が本当に焦がれるものは、冥府の玉座にあるのだから。


 彼女がそこへ駆け出さないのは、臆病だからではない。
 ただ勇敢なだけだ。何も見捨てられないほどに。
 俺すらも、この地上すらも捨てられないほどに。


 彼女が望むなら、それを拒むつもりはない。
 彼女が望むなら、いつでも妨げるつもりはない。

 追い掛けはしない。引き止めはしない。
 それで彼女は自由になれるのだから。


 だから彼女がそれを望むまで、
 今はどうかこの腕の中に。



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