25 我慢 | モクジ | 27 憎しみ


もしも

 わたしはあなたが大好きよ。
 改めて言ったことはなかったのだけど。

 あんまり当たり前で、恥ずかしくて。


 あなたの指が大好きよ。
 眠るときにいつも絡めてくる、節の目立つ長い指が大好き。
 そんなに探らなくても、わたしはいつもここにいるのに。

 あなたの髪が大好きよ。
 キスするときにいつも零れてくる、亜麻色の長い髪が大好き。
 絡め取ろうとしなくても、わたしはどこにも行ったりしない。

 あなたの唇が大好きよ。
 名前を呼ぶときに柔らかく動く、にじんだ色の唇が大好き。
 一晩中確かめなくても、わたしは消えたりしないのよ。

 あなたの温もりが大好きよ。
 寒いときにいつも包んでくれる、あなたの匂いの温もりが大好き。
 息ができないほど抱き締めなくても、わたしはあなたを離れない。

 あなたの瞳が大好きよ。
 いつもどんなときも見つめてくれる、優しいその瞳が大好き。
 そんなに熱く見つめられると、わたしは溶けてしまいそうなの。


 ――だけど、もしも
 もしもの話なのだけれど、
 あなたがその全てをなくしたとしても
 わたしはあなたが大好きよ。



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